魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
「あの人にはもともときっと、あたしなんて必要なかった。そしてあたしももう、誰かの手を必要とする子供じゃない。本当はもっと早く気付くべきだったんだ、もう出会ったころとは何もかもが変わってしまったんだっていうことに……。だからあたしは、あの人との関係を、終わらせなきゃならない」
そう言いながらも、彼女の手は震えて、私の手を強く掴む。だんだんと瞳が潤み、声が湿ってゆく。
「本当は……ずっとさ。お義兄様に傍にいて欲しいんだよ。でも……それよりも、あたしは彼に幸せになって欲しい。足を引っ張るあたしのことなんか忘れて、たくさんの人に囲まれて、いい家庭を作って、最初の苦しみはなんだったんだってくらい幸せになって欲しいの! そこには、辛いことを思い出させるあたしなんて、きっと要らないのよ……!」
リラフェンの唇が歪み、目から涙が零れ出した。そんな彼女を私はなにも言わずに引き寄せ抱き締めた。最も大切な人に輝いて欲しいから――そんな彼女の決断を尊重してあげたかった。
「ごめんね……! ここで涙を涸らしておかないと……あたし、あの人を引き留めて苦しめちゃうから……! もう大丈夫なんだって、ちゃんと、分かってもらわないといけないから……。ぁぁぁ――うわぁぁぁぁぁ、っ!」
ディクリド様から教わった通りに、私の出番なんてなかった……。
そう言いながらも、彼女の手は震えて、私の手を強く掴む。だんだんと瞳が潤み、声が湿ってゆく。
「本当は……ずっとさ。お義兄様に傍にいて欲しいんだよ。でも……それよりも、あたしは彼に幸せになって欲しい。足を引っ張るあたしのことなんか忘れて、たくさんの人に囲まれて、いい家庭を作って、最初の苦しみはなんだったんだってくらい幸せになって欲しいの! そこには、辛いことを思い出させるあたしなんて、きっと要らないのよ……!」
リラフェンの唇が歪み、目から涙が零れ出した。そんな彼女を私はなにも言わずに引き寄せ抱き締めた。最も大切な人に輝いて欲しいから――そんな彼女の決断を尊重してあげたかった。
「ごめんね……! ここで涙を涸らしておかないと……あたし、あの人を引き留めて苦しめちゃうから……! もう大丈夫なんだって、ちゃんと、分かってもらわないといけないから……。ぁぁぁ――うわぁぁぁぁぁ、っ!」
ディクリド様から教わった通りに、私の出番なんてなかった……。