魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
思うよりずっと彼女のフィトロさんに対する愛は深く、たとえ生まれや能力に恵まれなくたって、彼女の中には大事な人の幸せを一心に願える、とても純粋な心がある。他とはなにとも釣り合わないその美しさを、ひとりの女性として誇って欲しいと思った。
たとえ誰に伝えるものじゃなくても、彼女の想いは私が忘れない。腕の中の小さな温もりを強く抱きしめていると――まるで示し合わせていたように、その時は訪れた。
店を閉めているにも関わらず、外の呼び鈴が鳴って来客を知らせ……窓からその姿を確認すると、予想通りの人物がそこにいる。
リラフェンは涙を拭うと、顔を上げた。
「お義兄様が来たの?」
「ええ……。部屋に上げていいのね?」
「待って。ちゃんと話したいから、出迎える」
そう言ってリラフェンはベッドから降り、涙で濡れた顔を洗った。そして軽く化粧をし、いつものように細いリボンで髪を結わえ、身なりを整える。
それまで窓から呼びかけて待ってもらい、改めてフィトロさんを迎えた。
それから――ふたりは二階のリビングで長く話し込んでいたようだが、私はその内容を聞かなかった。
たとえ誰に伝えるものじゃなくても、彼女の想いは私が忘れない。腕の中の小さな温もりを強く抱きしめていると――まるで示し合わせていたように、その時は訪れた。
店を閉めているにも関わらず、外の呼び鈴が鳴って来客を知らせ……窓からその姿を確認すると、予想通りの人物がそこにいる。
リラフェンは涙を拭うと、顔を上げた。
「お義兄様が来たの?」
「ええ……。部屋に上げていいのね?」
「待って。ちゃんと話したいから、出迎える」
そう言ってリラフェンはベッドから降り、涙で濡れた顔を洗った。そして軽く化粧をし、いつものように細いリボンで髪を結わえ、身なりを整える。
それまで窓から呼びかけて待ってもらい、改めてフィトロさんを迎えた。
それから――ふたりは二階のリビングで長く話し込んでいたようだが、私はその内容を聞かなかった。