魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
「親父にも協力を頼まねぇとな……。待っていろサンジュ、新しい土地で自由を得たと思ってるなら、それは大きな間違いだ。お前は一生、俺たちの手から逃れられないんだよ……ひひっ、ふひゃははははっ!」

 ザドは自室を後にし、父親のもとへと向かう。その哄笑は不気味な広がりを見せ、ファークラーテンの屋敷全体を、仄暗い雰囲気へと包み込んでいった。



 そして一方、ザドがサンジュの居場所を突き止めた時期よりやや(さかのぼ)り……。

 ディクリド率いるハーメルシーズ領衛士団が先日隣国から獲得し、ノルシェーリア王国へ明け渡した領地に、父であるファークラーテン伯爵の代行として赴任していたソエルもまた、サンジュの所在を把握することとなっていた。
 ハーメルシーズ領と隣り合うその地にも、サンジュの作った魔導具の噂が流れて来たのだ。

 ザドとよく似たルートでその情報を仕入れ、サンジュの所在が明らかになったことを受けて、ソエルは黙考した。
< 226 / 485 >

この作品をシェア

pagetop