魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
「リラフェン、あなただって。きっとどこかのお淑やかな御令嬢だと言ったって通じると思うわ。お口さえ閉じてたらね」
「言ってくれるじゃない」

 楽し気な笑いを響かせて、私たちはお互いの姿を讃えに讃えた。

 リラフェンが纏うのは瞳の色に合わせた淡いパープルのバックレスドレス。
 膝で一旦すぼまったスカート部が先端に行くにしたがって華やかに拡がり、彼女のスリムな体のラインと相まって、美しさと華やかさを両立する。綺麗な薄紫の髪もそれに合わせて清楚に結い上げられ、それとなく立っているだけでこちらの目を引き寄せるほど魅力的だ。

 一方私が着せられたのは、自分では確実にお金があっても選ぶことのない、目にも鮮やかなローズカラーのドレスだ。
 飾りつけはそう多くないのに主張が強く感じられるのは、よく光を弾くビロードじみた生地と、ところどころ銀糸でステッチされた、花木や鳥の模様のせいか。肩に羽織ったシフォン生地が腰の部分で一旦巻かれ、ドレスの後ろへとふわりと伸びる。美しいデザインだが、どこかに引っ掛けてしまわないか気を使う。

 ちなみにこれらは、かって一緒に下働きをしていた仲間たちで、来客の相手で忙しい中時間を割いて、メイクまできっちり仕上げてくれた。今でも変わらぬ友情を示してくれた彼女たちには感謝しかない。
< 237 / 485 >

この作品をシェア

pagetop