魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
 おかげで外で待ってくれていたフィトロさんのもとに合流すると、珍しく彼の驚いた表情を拝むことができ、リラフェンと私は笑いを堪えるのに苦労する。

「失礼……本当にびっくりしたんだ。女性の変わり様というのは時に、想像を軽く上回るんだね。君たちのエスコート役を引き受けさせてもらったが……。参った、これは完全に僕の方が役得だな……」
「よく回る口。他の誰かにそういうこと言ってないでしょうね」
「言わないさ。僕の左胸の鼓動に誓って」

 リラフェンに軽く睨まれ、おどけて優雅にお辞儀をしてみせるフィトロさん。仲のよいふたりにはぜひ心置きなく今日のパーティーを楽しんでもらいたい。食事が終わるころには日も落ちて、ロマンティックな空気を味わうこともできるだろう。その内様子を見てふたりきりにさせてあげようと、私は心の中で思い定めるのだった。
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