魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
(25)この中のひとり
『皆……本日はよくこのハーメルシーズ城に集ってくれた。お前たちと共にこの新しい年を迎えられたことは、俺にとってなによりもの幸福だ。細かいことを言うのは得意ではないから、諸君には、ただただ感謝を伝えたい。この先も……俺と共により一層、この領地を盛り上げていってくれ!』
会場から一際高い位置に設けられた壇上の上で、体格のよい男性が朗々と声を張り上げた。それはこのハーメルシーズ城の城主であるディクリド様だ。いつもはあまり貴族らしからぬ、解放的で目立たない格好を好む彼だが、今日だけは櫛梳った頭髪をしっかりと撫でつけ整えている。
宵闇色の上下の各所から覗く華やかなレースの縁取り、背中を覆う分厚いマントもただただ優美だ。そうしているといつもの野性的な風貌は鳴りを潜め、その巨躯も相まって、ある種生まれながらに人を導く存在であったかのような偉大さが感じられて、いっそう素敵に見えるのだった。
ほれぼれと遠くからその姿を見つめていると、突然、彼の視線がこちらを向いたのでびくっとする。
『特に本年度の後半では、ファルメルの街を中心に、この街に新たな発展の兆しがもたらされた。それは魔導具という、魔術の技を元にした技術だ。それはこのノルシェーリア王国の王都でも力を入れて研究され、多くの人々の生活を支えるようになりつつある』
会場から一際高い位置に設けられた壇上の上で、体格のよい男性が朗々と声を張り上げた。それはこのハーメルシーズ城の城主であるディクリド様だ。いつもはあまり貴族らしからぬ、解放的で目立たない格好を好む彼だが、今日だけは櫛梳った頭髪をしっかりと撫でつけ整えている。
宵闇色の上下の各所から覗く華やかなレースの縁取り、背中を覆う分厚いマントもただただ優美だ。そうしているといつもの野性的な風貌は鳴りを潜め、その巨躯も相まって、ある種生まれながらに人を導く存在であったかのような偉大さが感じられて、いっそう素敵に見えるのだった。
ほれぼれと遠くからその姿を見つめていると、突然、彼の視線がこちらを向いたのでびくっとする。
『特に本年度の後半では、ファルメルの街を中心に、この街に新たな発展の兆しがもたらされた。それは魔導具という、魔術の技を元にした技術だ。それはこのノルシェーリア王国の王都でも力を入れて研究され、多くの人々の生活を支えるようになりつつある』