魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
にこりと微笑んだフィトロに、肩をそびやかせ、ディクリドは立ち並ぶ星々の様に眩い街灯たちを見上げた。
(しかし……王都は想像以上の煌びやかさだな。これも魔導具とやらが生まれて、国が発展していることを示すものだが、どうにも好きになれんな……)
魔術の光から目を逸らすディクリドの顔には微かに苦渋の色が浮かんでいる。少し足を速めてフィトロを引き連れつつ、彼は巨大な橋へと通り掛かった。
石造りのしっかりとしたアーチ橋は、平時なら大勢の人々が行きかっているところだろうが、今は縁の手すりに寄りかかった女性がひとり寂しそうに佇んでいるだけ。
それを気にしたフィトロがこそこそと耳打ちした。
「こんな夜遅くご婦人が……何かあったんでしょうか? 声を掛けますか?」
だがディクリドは首を振る。
「やめておけ。誰かもわからん男ふたりが急に話しかけても警戒されるだけだろう……。王都は警吏の数も多いんだ。必要があれば彼らが相手をするはずだ」
「おや……ディクリド様は相変わらず目がよろしい」
(しかし……王都は想像以上の煌びやかさだな。これも魔導具とやらが生まれて、国が発展していることを示すものだが、どうにも好きになれんな……)
魔術の光から目を逸らすディクリドの顔には微かに苦渋の色が浮かんでいる。少し足を速めてフィトロを引き連れつつ、彼は巨大な橋へと通り掛かった。
石造りのしっかりとしたアーチ橋は、平時なら大勢の人々が行きかっているところだろうが、今は縁の手すりに寄りかかった女性がひとり寂しそうに佇んでいるだけ。
それを気にしたフィトロがこそこそと耳打ちした。
「こんな夜遅くご婦人が……何かあったんでしょうか? 声を掛けますか?」
だがディクリドは首を振る。
「やめておけ。誰かもわからん男ふたりが急に話しかけても警戒されるだけだろう……。王都は警吏の数も多いんだ。必要があれば彼らが相手をするはずだ」
「おや……ディクリド様は相変わらず目がよろしい」