魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
「よーし。サンジュ、あたしたちもハーメルシーズの領民として、美食をお腹一杯に詰め込んで鋭気ってやつを養わないとね! フィッツはいいわよね? 伯と一緒にいつもお城で美味しいご飯食べられてるんでしょうから。今日はあたしたち専属のウエイターとしてもてなす側で働いてちょうだいな」
「はいはい。お嬢さん方、仰せのままに」

 元々そのつもりだったのか、フィトロさんはテーブルに近付くと、見事な手際でお皿の上に並べた料理を私たちにサーブする。盛りつけすら完璧だ。

 パセリで香味を添えた、蕩けるような白身魚のムニエルの隣には、つやつやのキャピアが乗ったチーズカナッペ。鮮やかな赤ワインソースのかかった骨付き子羊肉のローストに、甘酸っぱい黄金色のフルーツドレッシングがかけられたグリーンサラダ。デザートにはバターの濃厚な香りをふんだんに振りまく各種パイやフレッシュなクリームケーキ、カラフルなロックキャンディをまぶしたジュエリーのようなマカロンなど……到底すべては食べ切れないほどの種類の料理が、私たちの陣取ったテーブルに次々と運ばれてくる。

「さあさあ、僕のことは気にせずどんどん食べて」
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