魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
「ディクリド様!?」
確認するなりディクリドは走り出していた。
その反応に取り残されたフィトロを置き去りにすると、ディクリドは石橋の中央から眼下を覗き込む。
暗い夜空を映した運河は、ほとんど何も見えない。だがディクリドの目には水面に浮かぶ微かな波紋が見えていた。
(飛び込んだのか、馬鹿が――!)
すぐさま彼は手すりを乗り越え、運河に身を躍らせる。
「ディクリド様ッ!?」
後ろでフィトロの悲鳴が聞こえたが、一刻を争う。ディクリドは構わず水の中へと潜り、先程の娘の姿を探した。しかし……。
(くっ……見えん!)
魔導灯の光も届かぬ暗い水の中では、ディクリドの目ですら娘の姿を追うことが出来ない。季節はもう秋口の終わり。冷たい水の中では長時間の捜索はできまいし、それが可能であったとしても娘の命が保つまい。
確認するなりディクリドは走り出していた。
その反応に取り残されたフィトロを置き去りにすると、ディクリドは石橋の中央から眼下を覗き込む。
暗い夜空を映した運河は、ほとんど何も見えない。だがディクリドの目には水面に浮かぶ微かな波紋が見えていた。
(飛び込んだのか、馬鹿が――!)
すぐさま彼は手すりを乗り越え、運河に身を躍らせる。
「ディクリド様ッ!?」
後ろでフィトロの悲鳴が聞こえたが、一刻を争う。ディクリドは構わず水の中へと潜り、先程の娘の姿を探した。しかし……。
(くっ……見えん!)
魔導灯の光も届かぬ暗い水の中では、ディクリドの目ですら娘の姿を追うことが出来ない。季節はもう秋口の終わり。冷たい水の中では長時間の捜索はできまいし、それが可能であったとしても娘の命が保つまい。