魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
「ふん、サンジュが優しいからって舐めてると、あたしが叩き出すからね。ビシビシ厳しく指導してやるから覚悟してなさい」

 元気があって好ましい挨拶だったが、リラフェンは生意気に感じたようで、腕組みをして厳しい視線で答えた。

「どんとこいだよ。爺ちゃんのおかげで厳しいしごきには慣れてるからね。根性だけは誰にも負けないつもり」
「どうだか」

 それをルシルも胸を叩いて受け止め、ふたりが交わす視線に火花が爆ぜる。私は困った笑顔でオルジさんに話しかけた。

「それじゃ、お孫さんをお預かりします。でも、本当にいいんですか? お店の大事な跡取り候補を紹介していただいて」
「構わん構わん。本人から直々に申し出たんじゃ、サンジュ殿のところで腕を磨きたいとな。鍛冶とてなにも武器だけを作るにあらず……食器や生活用品、工具や農具などその利用は幅広い。そちらの魔導具製作の技術にも学ぶところはきっと多いじゃろう。それに、あの子の父は戦争で亡くなっておっての」
「そうなんですか……」

 どうも激しかった十年ほど前の戦争で自分の打った武器たちを持って、戦地に駆けつけ勇敢に戦って命を落としたのだという。そのことをこっそりオルジさんが耳打ちすると、ルシルが怒った声を出した。
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