魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
それでも欲深き人たちは、なにかを求めて争うのかも知れないと思いながら、ディクリドは関係のない妄想を打ち切った。せめて、もっとも大切なものたちだけでも笑顔で暮らせるように――この上なく利己的な想いの元に手を血で汚し続ける。それが、ディクリドたち国を守る者に課された……いや、唯一選び取った自由なのだから。
「先の戦いから近く、民の間で不安は出るだろうが仕方がない。兵を招集し、国境付近及び、砦が破られた際に予想される進路の重要拠点に配置しろ。同時に王国にも支援を要請し、他領からの援軍を募る。連絡は緊密に行い、相手の些細な動きも見逃さず報告せよ」
「「「ハッ!!」」」
命令を下すと、配下たちがそれぞれの役割を確認し合い、議場から退席してゆく。それを見送るとディクリド自身もペンを取り、繋がりの多い貴族たちへ後方支援を要請する文書をしたためようとした時だった。
「すみません、少しだけ失礼します」
側近のフィトロが、なにかに気付いたように懐に手を当て、会議場を離席する。
その理由をディクリドは察した。彼の義妹であったリラフェンから、なんらかの連絡があったのだろう。
「先の戦いから近く、民の間で不安は出るだろうが仕方がない。兵を招集し、国境付近及び、砦が破られた際に予想される進路の重要拠点に配置しろ。同時に王国にも支援を要請し、他領からの援軍を募る。連絡は緊密に行い、相手の些細な動きも見逃さず報告せよ」
「「「ハッ!!」」」
命令を下すと、配下たちがそれぞれの役割を確認し合い、議場から退席してゆく。それを見送るとディクリド自身もペンを取り、繋がりの多い貴族たちへ後方支援を要請する文書をしたためようとした時だった。
「すみません、少しだけ失礼します」
側近のフィトロが、なにかに気付いたように懐に手を当て、会議場を離席する。
その理由をディクリドは察した。彼の義妹であったリラフェンから、なんらかの連絡があったのだろう。