魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
「リラフェンから先程連絡があり、サンジュが……なにも言わずに姿を消したと」
「――――!」
思わずディクリドは、机の上で爪を立てた。手掛けていた書簡が破れ歪んでしまったのに眉をしかめると、数秒かけて力を抜き、紙くずとなったそれを手で払う。
「どこに行ったかはわかるか?」
「いいえ。置手紙があったそうですが、謝罪と、留守にするけれど心配はしなくていいという言葉、店の方をしばらく任せたいという内容で……それ以外はいつ帰るか、どこに行くかなどなにも書かれていなかったそうで。待てど暮らせど戻ってこないため、どうしても不安になったと……」
「そうか……」
ディクリドはリラフェンが心配するのも当然だと思った。
サンジュは細かいことによく気が付き、誰かに迷惑をかけることを嫌う性分だ。仮に急な用事があったとしても、あの魔導具店は自分の存在がなくてはなりたたないことをよく分かっている……通常ならば可能な限りの準備を行い、詳細な説明をしてから出て行こうとするだろう。
「――――!」
思わずディクリドは、机の上で爪を立てた。手掛けていた書簡が破れ歪んでしまったのに眉をしかめると、数秒かけて力を抜き、紙くずとなったそれを手で払う。
「どこに行ったかはわかるか?」
「いいえ。置手紙があったそうですが、謝罪と、留守にするけれど心配はしなくていいという言葉、店の方をしばらく任せたいという内容で……それ以外はいつ帰るか、どこに行くかなどなにも書かれていなかったそうで。待てど暮らせど戻ってこないため、どうしても不安になったと……」
「そうか……」
ディクリドはリラフェンが心配するのも当然だと思った。
サンジュは細かいことによく気が付き、誰かに迷惑をかけることを嫌う性分だ。仮に急な用事があったとしても、あの魔導具店は自分の存在がなくてはなりたたないことをよく分かっている……通常ならば可能な限りの準備を行い、詳細な説明をしてから出て行こうとするだろう。