魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
あの娘だけなのだ。ディクリドのすべてを知りたいと望み、往く道を見届けてくれると誓ってくれたのは。もはや家族ほどに近い存在となった彼女が、これ以上私欲のことしか考えない搾取者たちに弄ばれることを思うと、狂おしさが胸に込み上げる。
「俺が戻るまで、ここを頼むぞ」――そう言い残し、ディクリドが議場を後にしようとした時だ。
急ぎの様子で駆けてきた衛兵が、扉を押し開く。
「失礼いたします! 至急、伯爵様にお会いしたいという方がいらっしゃいました! 貴人の応対は我々ではできかね、優先的に応接室にお通しした次第であります!」
「では僕が――」
「む……。いや、直接話を聞こう」
一刻も早く主を旅立たせようというフィトロの気遣いを無下にしてまで、ディクリドはその人物の元に足を向けることにする。いくつもの戦場を切り抜けて来た自分の直感が、会っておくべきと囁いたのだ。
そして、ディクリドはとある人物と出会った――。
「俺が戻るまで、ここを頼むぞ」――そう言い残し、ディクリドが議場を後にしようとした時だ。
急ぎの様子で駆けてきた衛兵が、扉を押し開く。
「失礼いたします! 至急、伯爵様にお会いしたいという方がいらっしゃいました! 貴人の応対は我々ではできかね、優先的に応接室にお通しした次第であります!」
「では僕が――」
「む……。いや、直接話を聞こう」
一刻も早く主を旅立たせようというフィトロの気遣いを無下にしてまで、ディクリドはその人物の元に足を向けることにする。いくつもの戦場を切り抜けて来た自分の直感が、会っておくべきと囁いたのだ。
そして、ディクリドはとある人物と出会った――。