魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
そうならないためにも、私はひとりで姿を消さなければならない。
もはや私に選べる道はなかった。リラフェンたちには申し訳ないけれど……せめて父に嘆願し、“辺境伯の御用達”自体の権利書や、あの店舗で得た収益だけには手を付けないよう嘆願し、可能ならば私の代わりの魔導具師をあの領地に派遣して貰えるよう頼まないと……。
そんな決意を胸に、私は馬車に揺られ、王都への帰路を辿った……。
都に着いた時、馬車から降りる空気が刺々しく感じる気がして、私はつい息を吸うのを躊躇う。気持ちの問題だとわかっていても、いまだ、この街の空気は私にとって受け入れがたいものなのだ。
明るく活気ある街の雰囲気とは真逆の沈んだ気持ちで歩きだすと、私は見覚えのある街を辿り、よく連れてこられていた魔導具店の姿を目にした。
私を知っている誰かに見つかったらと俯いて足早に歩きながらも、以前より、わずかに客足が鈍っている感じがして……少しだけ私の中に、ざまあみろという薄暗い感情が生まれた。それを思い起こしたくなくて、私は目を瞑るようにしてその場を離れる。
もはや私に選べる道はなかった。リラフェンたちには申し訳ないけれど……せめて父に嘆願し、“辺境伯の御用達”自体の権利書や、あの店舗で得た収益だけには手を付けないよう嘆願し、可能ならば私の代わりの魔導具師をあの領地に派遣して貰えるよう頼まないと……。
そんな決意を胸に、私は馬車に揺られ、王都への帰路を辿った……。
都に着いた時、馬車から降りる空気が刺々しく感じる気がして、私はつい息を吸うのを躊躇う。気持ちの問題だとわかっていても、いまだ、この街の空気は私にとって受け入れがたいものなのだ。
明るく活気ある街の雰囲気とは真逆の沈んだ気持ちで歩きだすと、私は見覚えのある街を辿り、よく連れてこられていた魔導具店の姿を目にした。
私を知っている誰かに見つかったらと俯いて足早に歩きながらも、以前より、わずかに客足が鈍っている感じがして……少しだけ私の中に、ざまあみろという薄暗い感情が生まれた。それを思い起こしたくなくて、私は目を瞑るようにしてその場を離れる。