魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
 やはり、ここはずっと変わらないのだ……。私は諦めの気持ちを胸に抱きながら、誰かが訪れるのをただ待つ。そして……。

「よう。元気そうじゃないか、サンジュ」

 屋敷の奥から、ひとりの男性が現れ、私に声をかけた。
 二番目の兄であるザド……彼はくつくつと喉の奥を鳴らし、私の腕を取って引き寄せた。
 そして耳元にそっと囁く。

「もう逃げられないぜ。二度とな――」

 覚悟していたとはいえ、その言葉は私の心の中に残されていた、意思の光を根こそぎ奪い取る。
 そして私は彼に手を引かれ、私を閉じ込めていたこの屋敷の中へ引き戻されていった。



 ……家に戻ってきた私を待っていたのは、当然歓迎の言葉ではなく、容赦のない罵声だ。父が吠え、腕を勢いよく私の目の前で振り上げる。
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