魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
「結婚が嫌で家を逃げ出すなど、貴族としてあるまじき醜態よ! よく平気で戻って来れたものだ!」
執務室には長兄のソエル以外の姿が揃っていた。父の手のひらが頬を打ち据え、私は床の上に勢いよく倒れる。だが、その時にはまだかろうじて、父に問いかけるだけの気力は残っていた。
「ううっ……。それについては、申し訳ありません……。ですが、家族とはいえ、私の製作した魔導具の権利がすべてあなたたちのものとなるなんて。そのような契約、明らかに不条理では……!」
「うるさいわ! 卑しい腹から生まれ、本来なら我が家から追放されるべきだったお前をその年まで飯を食わせ、育ててやったのだ! その恩を一生を掛けて返そうとは思わんのか!」
しかしそんななけなしの反抗も彼らの暴力の前には無意味で、父は倒れ込んだ私の足をきつく踏みつけにした。
「我が娘ながら、度し難い屑めが……!」
そこで風切り音を響かせ、母が鞭を手に歩み寄ってくる。
「何度体に教え込んでもその愚かしさは消えないようね! お前などはしょせん穢れた血の混ざった下賎の娘。いっそのこと、外で野垂れ死んでしまえばよかったものを……! ええい気に障る、この、この!」
執務室には長兄のソエル以外の姿が揃っていた。父の手のひらが頬を打ち据え、私は床の上に勢いよく倒れる。だが、その時にはまだかろうじて、父に問いかけるだけの気力は残っていた。
「ううっ……。それについては、申し訳ありません……。ですが、家族とはいえ、私の製作した魔導具の権利がすべてあなたたちのものとなるなんて。そのような契約、明らかに不条理では……!」
「うるさいわ! 卑しい腹から生まれ、本来なら我が家から追放されるべきだったお前をその年まで飯を食わせ、育ててやったのだ! その恩を一生を掛けて返そうとは思わんのか!」
しかしそんななけなしの反抗も彼らの暴力の前には無意味で、父は倒れ込んだ私の足をきつく踏みつけにした。
「我が娘ながら、度し難い屑めが……!」
そこで風切り音を響かせ、母が鞭を手に歩み寄ってくる。
「何度体に教え込んでもその愚かしさは消えないようね! お前などはしょせん穢れた血の混ざった下賎の娘。いっそのこと、外で野垂れ死んでしまえばよかったものを……! ええい気に障る、この、この!」