魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
そこには、大小いくつもの傷跡が、古いもの新しいものに限らず刻み込まれているはずだ。目を背ける傍聴人が珍しくないことが、その痛ましさを物語る。
「私は生まれてから、ずっと家族に虐待を受けて来ました。魔導具づくりを強制されたことだけならば、まだ耐えられたのかも知れません。けれど、彼らは私に言葉や暴力を使って支配し、まるで道具のように休む間もろくに与えず働かせ続けました。そして、他家に取り入り更なる権勢を得るために、私の身を売ろうとした。だから私は……数か月前に家を出た時、本当は冷たい川に身を投げ、死のうとしたのです……」
その時の恐怖と寂しさと――そして私を掬い上げてくれた、あの力強い両手を懸命に思い出しながら、私は訴えかけた。
「でも幸いにも、そんな私はある人物の手によって命を救われました。その方は、私に今までどれほど求めようと得られなかった、他者との正常な関わりを与えてくれたんです。だから私は、彼らの暮らしをよくするために、自らの力を尽くしたかった……。確かに、父に言われるがまま、いくつかの書類に自ら署名を行ったのは事実です。その契約を破ってしまったことは認めざるを得ません。でもどうか、目に見えるこの傷を信じていただけるのならば……私がこの家に戻ったことで、それ以上の契約はなかったことにしていただきたくて。あの場所に私がいた証だけは奪わず、そのままにしておいて欲しいんです! 皆様にお願いいたします……どうか!」
「――詭弁だっ!」
「私は生まれてから、ずっと家族に虐待を受けて来ました。魔導具づくりを強制されたことだけならば、まだ耐えられたのかも知れません。けれど、彼らは私に言葉や暴力を使って支配し、まるで道具のように休む間もろくに与えず働かせ続けました。そして、他家に取り入り更なる権勢を得るために、私の身を売ろうとした。だから私は……数か月前に家を出た時、本当は冷たい川に身を投げ、死のうとしたのです……」
その時の恐怖と寂しさと――そして私を掬い上げてくれた、あの力強い両手を懸命に思い出しながら、私は訴えかけた。
「でも幸いにも、そんな私はある人物の手によって命を救われました。その方は、私に今までどれほど求めようと得られなかった、他者との正常な関わりを与えてくれたんです。だから私は、彼らの暮らしをよくするために、自らの力を尽くしたかった……。確かに、父に言われるがまま、いくつかの書類に自ら署名を行ったのは事実です。その契約を破ってしまったことは認めざるを得ません。でもどうか、目に見えるこの傷を信じていただけるのならば……私がこの家に戻ったことで、それ以上の契約はなかったことにしていただきたくて。あの場所に私がいた証だけは奪わず、そのままにしておいて欲しいんです! 皆様にお願いいたします……どうか!」
「――詭弁だっ!」