魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
「父上……! これでサンジュの身柄はこちらに取り戻したのです。業腹だが、今はそれでよしとしましょう。あいつを利用すれば、金には困らない。けちくさい店のひとつやふたつくれてやればいい」
「だ、だが……」

 それに母も便乗し、刺し殺しそうな視線を私に送りながら父を押さえた。

「そうよあなた。これから今以上の贅沢が待っているのだから。あんな小娘の手垢のついた店などに執着する意味はないわ」
「ぐ……む。そ、そうだな。サンジュめが……。よいわ、後々我々の手を煩わせたことを存分に後悔させてやる」

 父が歯を強く軋らせ、私に血走った目を向ける。

 でも、私はこれでもう満足だった。
 初めて、自分からできる限りの反抗をして、わずかとはいえ彼らに一矢報いたのだ。

 未来のことを考えると、体が震える。でも、私は大切な人たちのために、ちゃんと勇気を振り絞って、戦えるようになれたのだ。それだけは胸に誇れる思い出となった。

 裁判長が木槌を振り上げ、決定の合図を下す。
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