魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
 世間話をするかのように、乾いた低い声で尋ねられ、私は戸惑う。
 その声には、今しがた私が行った蛮行に対する憤りも苦痛もなく、ただ純粋に命を粗末にする理由が分からないという感じだった。

「どうして……生きていないといけないんです!? こんなに、苦しいのに……!」

 対して私はその場にへたへたと膝を突きながら答えた。彼に対しての行為に謝罪や言い訳をするわけでもなく、心の赴くままに。

「そんな大きな体をしていて強そうで、立派な身なりをしていて……誰にも頼らずに生きていけそうな、あなたのような人にはわかりません! 私のような、弱い人間の気持ちなんて……」

 死を間近にしたせいで、捨て鉢になっているのかも知れなかった。男性にこんな明確な反抗を示したことは、私にとって初めてのことだ。

 黙りこんだまま立っていた男が私の目の前にしゃがみこむと、その瞳がこちらと合わさり、片手がゆらっと持ち上げられた。

(ぶたれる……!)
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