魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
 その言葉がザドのなんらかの核心を突いたか、激高した彼の拳がソエルの右頬を打った。ソエルは地面に大きく倒れ込むと口の端から血を流すが、立ち上がると晴れやかに口を開けて笑った。

「ふふ……あはははははっ! これで私もお前たちも終わりだよ。ああ、すっきりした……今後はどうなるかわからんが、お互い二度と関わりを持ちたくないものだな」
「チィ……いつか、地獄に落としてやる」

 警備兵に取り押さえられたザドは、捨て台詞を吐きながら消えていった。原告となっていた三人の姿が消え、そして、ソエルの腕にも関係者として枷が掛けられてしまう。
 彼はそのままなにも言わず、当然のように連れて行かれようとする。思わず私はその背中に呼びかけた。

「待って!」

 ソエルがその場で束の間、足を止めてくれる。

「ソエル……お兄様」
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