魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
もし私が、彼が幼少期にしてくれたことを覚えていて、その存在を信じることができていたなら……。そして、後少しの我慢ができていたなら、きっと事態は違った方向に向かっていた。
そうとわかっているはずだ。なのに、彼は謝罪しようとした私を冷たく跳ね除ける。
「謝るな。私がやつらと一緒になってお前を傷付けていたのは事実だ。私はもうお前の兄などではなく、ただの犯罪者でしかない。こんな男に情けを掛ける暇があるなら、お前は自分のすべきことをしろ」
それだけ言うと、背中で拒絶を表し、再び迷いなく彼は歩いてゆく。
それでも……私はもう一度だけ、彼に呼びかけた。
「お兄様、ありがとう! 私、思い出したんです、昔のことを……! また話しましょう、いつか必ず会いに行きますから!」
ソエルの肩が揺れ、一度だけこちらを振り向いた。
その驚いた顔に、一瞬淡い笑みが浮かんだように見えたが、すぐにまた背を向け彼も扉の向こうへと、消えてゆく。
頭を下げて見送る私の横を、貫禄ある老侯爵が通り過がる。
そうとわかっているはずだ。なのに、彼は謝罪しようとした私を冷たく跳ね除ける。
「謝るな。私がやつらと一緒になってお前を傷付けていたのは事実だ。私はもうお前の兄などではなく、ただの犯罪者でしかない。こんな男に情けを掛ける暇があるなら、お前は自分のすべきことをしろ」
それだけ言うと、背中で拒絶を表し、再び迷いなく彼は歩いてゆく。
それでも……私はもう一度だけ、彼に呼びかけた。
「お兄様、ありがとう! 私、思い出したんです、昔のことを……! また話しましょう、いつか必ず会いに行きますから!」
ソエルの肩が揺れ、一度だけこちらを振り向いた。
その驚いた顔に、一瞬淡い笑みが浮かんだように見えたが、すぐにまた背を向け彼も扉の向こうへと、消えてゆく。
頭を下げて見送る私の横を、貫禄ある老侯爵が通り過がる。