魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
 これで……私はファークラーテン家から解放され、自由になったのだろうか?
 実感がなく、数日間拘束された疲労も相まってよろめく体をディクリド様が支えてくれた。

「さあ、帰ろう、ハーメルシーズ領へ」

 その言葉でようやく、またあの幸福な日々の続きを見られるのだと理解できた私は、自然と顔中に心からの笑みが浮かび……。

「――はいっ!」

 とっても元気のよい声で、返事をして見せた。
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