魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
「ちぇ~。サンジュさん、また後でこっそり内容教えてくださいよ?」
リラフェンが追い払うように手を振り、ルシルが口を尖らせながらオルジさんの鍛冶店へと帰っていく。こんな些細なやりとりでさえも立ち会えることが嬉しく、私の頬は自然と緩んでいる。
……そういえば、ここ最近でも色んなことがあった。
まずは、ファークラーテン伯爵家のその後の話を、配下をあの街に留めているフィトロさんから教えてもらったこと。
兄の告発文書と調査により、私への虐待や恫喝があったことや、私の行った仕事や新たな魔導具の発明がすべて彼らの功績にされていたことなどが発覚し、ファークラーテン家は後におおいに糾弾されることになったという。
父母やザドは服役こそしなかったものの、大きく周囲からの信用を失った。父は国の魔導具局への在任資格を剥奪され、資産の大半を没収。ザドも経営していたふたつの魔導具店の権利を奪われたという。数か月前までは天高く舞い上がらんとしていたあの家の凋落具合に、私は複雑さを禁じ得ない。
そんな風に私とファークラーテン家の関係は決着し、多額の賠償金が手元に送られてきたものの、私はこの使い道も分からず金庫を用意して家の奥に閉まうことにした。必要以上の富や名声がどれだけ人を狂わすのか理解した今、使い道は慎重に考えなければならないと思っている。
リラフェンが追い払うように手を振り、ルシルが口を尖らせながらオルジさんの鍛冶店へと帰っていく。こんな些細なやりとりでさえも立ち会えることが嬉しく、私の頬は自然と緩んでいる。
……そういえば、ここ最近でも色んなことがあった。
まずは、ファークラーテン伯爵家のその後の話を、配下をあの街に留めているフィトロさんから教えてもらったこと。
兄の告発文書と調査により、私への虐待や恫喝があったことや、私の行った仕事や新たな魔導具の発明がすべて彼らの功績にされていたことなどが発覚し、ファークラーテン家は後におおいに糾弾されることになったという。
父母やザドは服役こそしなかったものの、大きく周囲からの信用を失った。父は国の魔導具局への在任資格を剥奪され、資産の大半を没収。ザドも経営していたふたつの魔導具店の権利を奪われたという。数か月前までは天高く舞い上がらんとしていたあの家の凋落具合に、私は複雑さを禁じ得ない。
そんな風に私とファークラーテン家の関係は決着し、多額の賠償金が手元に送られてきたものの、私はこの使い道も分からず金庫を用意して家の奥に閉まうことにした。必要以上の富や名声がどれだけ人を狂わすのか理解した今、使い道は慎重に考えなければならないと思っている。