魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
少し前までのことを思い出したのか、ふたりはやや遠い目をしていた。穏やかだがどこか覚悟の篭るそのまなざしに、リラフェンがこちらの手をきゅっと掴み、私は訊いた。
「戦いが、始まるんですか?」
「ああ」
言葉少なにディクリド様が答え、私はその時が来たと思った。彼らはこれから、終わりの見えない戦いに身を投じるのだ。ここで暮らす人々の営みが、脅かされないために……。
フィトロさんが進み出て、優しくリラフェンの肩を抱いた。
「少しだけ、中を借りていいですか? サンジュ」
「もちろんです」
リラフェンが、フィトロさんに連れられお店の中に入ってゆく。その瞳は赤らんでいた。
その場に残され、私はなんとも言えない気分でシャルビュ号の首筋に手を当てる。柔らかく巡る命の脈動……この心地いい感触も二度と味わうことはできないかもしれない。この子たちもきっと戦場でディクリド様たちと一緒に死の恐怖と戦うのだ。その姿を目に焼き付けながら、私はディクリド様に問う。
「戦いが、始まるんですか?」
「ああ」
言葉少なにディクリド様が答え、私はその時が来たと思った。彼らはこれから、終わりの見えない戦いに身を投じるのだ。ここで暮らす人々の営みが、脅かされないために……。
フィトロさんが進み出て、優しくリラフェンの肩を抱いた。
「少しだけ、中を借りていいですか? サンジュ」
「もちろんです」
リラフェンが、フィトロさんに連れられお店の中に入ってゆく。その瞳は赤らんでいた。
その場に残され、私はなんとも言えない気分でシャルビュ号の首筋に手を当てる。柔らかく巡る命の脈動……この心地いい感触も二度と味わうことはできないかもしれない。この子たちもきっと戦場でディクリド様たちと一緒に死の恐怖と戦うのだ。その姿を目に焼き付けながら、私はディクリド様に問う。