魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
伏せていた顔を上げた私を、ディクリド様が背中から抱き締め、後ろ髪に顔を埋める。恥ずかしさよりも深い悲しみを感じ、私も力を抜いてそれを受け入れた。
店の中から、リラフェンのすすり泣く声が微かに聞こえてくる。
愛する人に二度と会えないとしても、生きてさえいてくれたら救われる気持ちもある。しかし、その存在が完全に世の中から消えてしまった時、どんな苦しみが私たちを待つのだろう……。
「ディクリド様!」
それを考えると堪らなくて。
振り返ると私は、自分から彼の唇を求めた。平静なつもりでいても、本当は彼を失うのが怖くて……でも、耐えなければ。
彼の掌が、ぐっと私の背中をかき抱いた。古い傷痕に火を灯すように強く。
ずっと一緒に居たい……この先のなにもかもを犠牲にしてでも。そんな想いを伝えれば、きっと彼を苦しめるだけだから……。
だからこのひと時だけに、すべてを封じ込めて――。
私は顔を離すと、指先で涙を払い、笑顔を作った。
店の中から、リラフェンのすすり泣く声が微かに聞こえてくる。
愛する人に二度と会えないとしても、生きてさえいてくれたら救われる気持ちもある。しかし、その存在が完全に世の中から消えてしまった時、どんな苦しみが私たちを待つのだろう……。
「ディクリド様!」
それを考えると堪らなくて。
振り返ると私は、自分から彼の唇を求めた。平静なつもりでいても、本当は彼を失うのが怖くて……でも、耐えなければ。
彼の掌が、ぐっと私の背中をかき抱いた。古い傷痕に火を灯すように強く。
ずっと一緒に居たい……この先のなにもかもを犠牲にしてでも。そんな想いを伝えれば、きっと彼を苦しめるだけだから……。
だからこのひと時だけに、すべてを封じ込めて――。
私は顔を離すと、指先で涙を払い、笑顔を作った。