魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
背中越しに手を上げ、ゆっくりと小さくなるその後ろ姿を見つめていると、涙が出そうになる。
キイと、後ろから扉が開く音がした。泣き腫らした顔のリラフェンが、ふらふらとした足取りでこちらに近付いて来る。
「行っちゃったのね……」
「うん……」
馬が駆け去っていった方向をふたりで眺めながら、私たちはお互いの身体を支え合って、唇をわななかせた。
「女って、損よ……! こんな時っ、なにも……できない」
「私たちはこの場所が変わらないように皆を支えましょう。彼らが帰ってきた時、安心して休めるように」
むせび泣くリラフェンを抱き締めながら、唇を強く噛む。
今も私たちのように……どこかの誰かが、これから遠くで流される血を憂いている。その想いが無駄にならないよう……せめて――。
“茜色”の空のもと……強く吹いた春風に零れた涙をさらわれながら私たちは、待ち人たちのもとへ大切な人たちが失われず戻ることを祈った。
キイと、後ろから扉が開く音がした。泣き腫らした顔のリラフェンが、ふらふらとした足取りでこちらに近付いて来る。
「行っちゃったのね……」
「うん……」
馬が駆け去っていった方向をふたりで眺めながら、私たちはお互いの身体を支え合って、唇をわななかせた。
「女って、損よ……! こんな時っ、なにも……できない」
「私たちはこの場所が変わらないように皆を支えましょう。彼らが帰ってきた時、安心して休めるように」
むせび泣くリラフェンを抱き締めながら、唇を強く噛む。
今も私たちのように……どこかの誰かが、これから遠くで流される血を憂いている。その想いが無駄にならないよう……せめて――。
“茜色”の空のもと……強く吹いた春風に零れた涙をさらわれながら私たちは、待ち人たちのもとへ大切な人たちが失われず戻ることを祈った。