魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
 だが、それはきっと私たちが未だ活用法を生み出せていないだけなのだ。例えば魔導具を作り出した偉大な人物が、溶解させた魔石を銀に浸透させて術式盤を作り上げたように、魔力自体にもこれまでに知られていなかった使い方がきっとあるはず。それには、魔力がどういう性質を持っているのかを探る必要があるだろう。そして、残念なことにそれをするのに必要な膨大な時間は今のところ私に存在しない……。

 抽出したはいいが、私はその浮遊した魔力をどうしようかと悩んだ末……その中に魔導具の使用により、中の魔力を使い切った廃棄魔石を(かざ)してみる。

 すると魔力の光は、透明になっていた廃棄魔石にすうっと吸い込まれて、元の紫色の輝きを取り戻させた。術式を起動するのに使った魔石よりかなり小さかったが、なんとか魔力は中に収まったようだ。

(なるほど……やっぱり魔力を宿すのに適した素材があるんだろうな)

 私はそれをポケットに仕舞い込むと、魔力についてさらなる考えを巡らせた。
 空中や水中でなく、魔力が土中にてのみ結晶化するのは、一箇所に留まり、十分な時間をかけて凝縮される必要があるからなのかとか……。なぜこうした紫という、基本的に地水火風の四属性とされている魔術のいずれにも属さない妙な色合いになっているのかとか……。
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