魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
皆との出会いや、初めてお城で仕事を教わった時のこと。自分自身というものを理解していく過程で、オルジさんの鍛冶店に連れて行かれ、再び魔導具に触れるようになったこと。お店を譲ってもらったことやリラフェンの悩み、新しい年を迎えて、宴でディクリド様の過去に触れることになったこと。そして、あの裁判を経て、ファークラーテン家から解放されることになったことも……。
思い返せば、大事な時にはいつでもディクリド様の姿がどこかにあった。想いが募るばかりで、胸が締め付けられ、テーブルの上に涙の雫が弾けた。
「はぁ……」
こんなことでは駄目だ。リラフェンが帰って来たら心配を掛けてしまう。私はしばらく壁にもたれかかって深呼吸し、気持ちを落ち着けた。
そんな時だ――外でなにか物音がしたのは。ドアが数度叩かれ、私はもしやと思って玄関に走る。
ディクリド様が戻って来てくれたのでは――そんな期待を持って扉を勢いよく開けた。しかしそれは裏切られ、開けた戸口には人の姿はない。
「あれ……? 誰か、いますか?」
小石かなにかが扉にぶつかる音を聞き間違えたのだろうか。そう思った私は声を沈ませ、誰もいない場所に向けて問いかけた。当然ながら返答はない。
思い返せば、大事な時にはいつでもディクリド様の姿がどこかにあった。想いが募るばかりで、胸が締め付けられ、テーブルの上に涙の雫が弾けた。
「はぁ……」
こんなことでは駄目だ。リラフェンが帰って来たら心配を掛けてしまう。私はしばらく壁にもたれかかって深呼吸し、気持ちを落ち着けた。
そんな時だ――外でなにか物音がしたのは。ドアが数度叩かれ、私はもしやと思って玄関に走る。
ディクリド様が戻って来てくれたのでは――そんな期待を持って扉を勢いよく開けた。しかしそれは裏切られ、開けた戸口には人の姿はない。
「あれ……? 誰か、いますか?」
小石かなにかが扉にぶつかる音を聞き間違えたのだろうか。そう思った私は声を沈ませ、誰もいない場所に向けて問いかけた。当然ながら返答はない。