魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)

(36)決戦の舞台

 南北に長い距離を跨ぐハーメルシーズ領の国境線。

 その中央の位置に建造された巨大なハゼルハイド砦にて、ディクリド率いるノルシェーリア王国軍・ハーメルシーズ衛士団の部隊は敵軍の侵攻を食い止めていた。

 今回のマルディール王国の部隊規模は目算で十万程度、砦の名前の由来となった目の前のハゼルハイド平原を埋め尽くす勢いだ。守る側のハーメルシーズ衛士団と比べて倍近くの規模があった。
 だが、こちらには地の利がある。砦という高所からの矢による一斉攻撃や、衛士団の精強さも相まって、何度かの交戦で敵軍との数の差は減少し、今は双方膠着状態に陥っている。

 しかしそれは現段階での話だ。こちらの被害も無傷とはいかず、そして敵軍に動揺が見られないことからすると、援軍の用意があることも考えられる。もし後方から大軍が合流し、部隊を分散させて手薄な場所を突かれれば、そこから国境を突破され、民に被害が及ぶことは間違いない。
 国境を突破した敵部隊の掃討は容易ではない。後背を突く形でこちらが攻撃を仕掛ければ、残っていた敵軍本隊が連動して後ろを追いかけて来る。そうなればハーメルシーズ側の部隊は前後を挟まれ、たちまち殲滅の憂き目に遭うだろう。
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