魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
 地割のフースに込められた魔術は、一定範囲の地面を崩すほど激しい振動を与える。それを利用すれば、少なくとも彼の周りに散らばった数個の魔導具の内蔵魔石を爆発に巻き込める算段はあった。それは思いのほか効果を発揮し、予想した以上の破壊を生み出してしまったけれど……。

 結果はこの通り。立場は逆転し、今はこうして、私の手にザドの生死が委ねられている。

「う、ぐ……殺すのか。俺を……」

 すでに彼は戦意を無くしていた。
 すべてを失い、ぼろぼろで血を流して蹲る彼の姿は憐れだ。だが、私もこの期に及んで彼に手を差し出すことはできない。

「殺しはしません。でも……あなたの考えが私のものと相容れないことは、よくわかりました。私にだって、大切なものが……守るべきものができたんだから、そのためならいくらだって戦います……! 次があれば、容赦しない。さあ、二度と私たちには近づかないで!」

 私はあらん限りの意志を込めて彼を睨み付け、サイスを押し出す。先ほどの行動も一歩間違えれば死人が出ていてもおかしくなかった。それが分かっていて、追い詰められていたとはいえ、私は躊躇わずに行動に移したのだ。
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