魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
できる限りのことはしたつもりだが、それでもすべてが思い通りに行くわけではない。多くの心ある兵士がこの領地を守ろうと命を散らしても、相手の力がそれを上回っていれば……その志は無に帰すこともある。
それでも……ディクリドは信じて顔を上げた。
自分が俯いていては、戦場で必死に戦ってくれた仲間たちに失礼だ。生きていられたのならば、自分の責任を引き続き果たさないとならない。
敵の姿が周りに居ないことを重々確認した後、ディクリドはゆっくりと砦へと近付いていった。監視兵のいる尖塔を見つけると、それに向かって手を振りながら進んでゆき、門の前で立ち止まる。
鉄の門扉がゆっくりと開いていく。砦に大きな損壊は見られず、ここは戦場にならずに済んだのだとほっとする。そして、もどかしいというかのように開く前に隙間を通り抜けて、ひとりの騎士が駆けつけてくる。その顔には見覚えがあった。
「あ、あなた様は――!?」
「ジェレムか!」
歳はもう五十台近く、白髪の目立ち始めた頭髪短く刈り込んでいるこの男性は、ジェレマイン・ラークセン伯爵という。
それでも……ディクリドは信じて顔を上げた。
自分が俯いていては、戦場で必死に戦ってくれた仲間たちに失礼だ。生きていられたのならば、自分の責任を引き続き果たさないとならない。
敵の姿が周りに居ないことを重々確認した後、ディクリドはゆっくりと砦へと近付いていった。監視兵のいる尖塔を見つけると、それに向かって手を振りながら進んでゆき、門の前で立ち止まる。
鉄の門扉がゆっくりと開いていく。砦に大きな損壊は見られず、ここは戦場にならずに済んだのだとほっとする。そして、もどかしいというかのように開く前に隙間を通り抜けて、ひとりの騎士が駆けつけてくる。その顔には見覚えがあった。
「あ、あなた様は――!?」
「ジェレムか!」
歳はもう五十台近く、白髪の目立ち始めた頭髪短く刈り込んでいるこの男性は、ジェレマイン・ラークセン伯爵という。