魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
彼は母親が死去した前に沈み込んだディクリドを墓の前で𠮟咤してくれた心ある人物だ。穏健な人物だが守備的な戦いの才覚を父が見出し、国境守備の任を授けていた。彼も激しく戦ったのか、頬や首筋に傷を負い、包帯に浮かぶ血の跡が生々しい。
「もしや……ディクリド様ででお間違いないかっ!?」
「この顔を見忘れてはおるまい。長らく領地を不在にしたが、なんとか帰り着くことができた……」
「よ、よかった……! 敵将を討ち取った後、行方不明という報告が届いておりまして……万が一もあり得るかと我らは大変気落ちしておったのです。さあ……中に!」
感極まった様子のジェレマインは、砦側になにか合図をすると、馬の轡を引いていった。誘導されつつ、そこでディクリドはしばし躊躇う。
戦争はどうなったのか……それを尋ねるのが怖くなったのだ。はたして、あの指揮官との決戦に勝ったことで、敵軍は撤退の判断をしてくれたのか……?
手のひらが冷たくなり、汗が滲む。緊迫感が胸に押し寄せ、耳が詰まったような感じがした。彼の気持ちを察したか、シャルビュ号までが足を止める。
「どうなされた、ディクリド様?」
「もしや……ディクリド様ででお間違いないかっ!?」
「この顔を見忘れてはおるまい。長らく領地を不在にしたが、なんとか帰り着くことができた……」
「よ、よかった……! 敵将を討ち取った後、行方不明という報告が届いておりまして……万が一もあり得るかと我らは大変気落ちしておったのです。さあ……中に!」
感極まった様子のジェレマインは、砦側になにか合図をすると、馬の轡を引いていった。誘導されつつ、そこでディクリドはしばし躊躇う。
戦争はどうなったのか……それを尋ねるのが怖くなったのだ。はたして、あの指揮官との決戦に勝ったことで、敵軍は撤退の判断をしてくれたのか……?
手のひらが冷たくなり、汗が滲む。緊迫感が胸に押し寄せ、耳が詰まったような感じがした。彼の気持ちを察したか、シャルビュ号までが足を止める。
「どうなされた、ディクリド様?」