魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
馴れ馴れしく背中に貼りついたルシルを、リラフェンがうっとおしそうに引き剥がす。
「あたしはね、あんたと違って家のことを色々やってんの! この口が悪いのはどうしたら直るの!? いっそ、全部縫い合わせてやろうか!?」
「やめろ~、暴力はなにも生まないんだぞ~」
「ほらほら、そのくらいにしておいて。ふたりとも……」
取っ組み合いになりつつも口元は緩んでいるふたりを仲裁しつつ、私は陳列していた魔導具の位置を整えた後、軽い清掃に取り掛かろうとしていたルシルに話しかける。
「ルシル、お昼ご飯はどうする? 今日はリラフェンが作ってくれるけれど……」
「ご相伴に預かりたいのは山々ですけど、遠慮しときます。だって味は天下一品だけど、あんだけ惚気が多すぎちゃ、なんでもお砂糖まぶされた気分になっちゃうし」
うぇぇと舌を出した彼女に、赤くなったリラフェンが反論した。
「なによ。好きな人が戻ってきたんだからちょっとくらい、いいでしょうが。あんたも悔しかったらいい男探してきなさい」
「悔しくなんてないもんね~。うちはこの腕ひとつ、職人一筋で生きてくんだから」
「あたしはね、あんたと違って家のことを色々やってんの! この口が悪いのはどうしたら直るの!? いっそ、全部縫い合わせてやろうか!?」
「やめろ~、暴力はなにも生まないんだぞ~」
「ほらほら、そのくらいにしておいて。ふたりとも……」
取っ組み合いになりつつも口元は緩んでいるふたりを仲裁しつつ、私は陳列していた魔導具の位置を整えた後、軽い清掃に取り掛かろうとしていたルシルに話しかける。
「ルシル、お昼ご飯はどうする? 今日はリラフェンが作ってくれるけれど……」
「ご相伴に預かりたいのは山々ですけど、遠慮しときます。だって味は天下一品だけど、あんだけ惚気が多すぎちゃ、なんでもお砂糖まぶされた気分になっちゃうし」
うぇぇと舌を出した彼女に、赤くなったリラフェンが反論した。
「なによ。好きな人が戻ってきたんだからちょっとくらい、いいでしょうが。あんたも悔しかったらいい男探してきなさい」
「悔しくなんてないもんね~。うちはこの腕ひとつ、職人一筋で生きてくんだから」