魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
「でもね、その人はある男に見染められて、そのお屋敷で働くことになったのです。相手は金払いもよく最初は喜んでいたけれど……ある日、酷い出来事が起こりました。男が彼女の許しもなくその身に手を付けたのです。女性は毎日を泣き腫らしながらも、それでも私と自分を養うために、その後も必死で働きました。そうして数か月すると彼女は身籠り、ひとりの赤子を生んだ」
ザドにはどうして女がこんな話をするのかわからなかった。男が見目麗しい娘に手を付けるのは日常茶飯事だ。それのなにが悪いのだ、そう思って聞いていた。
「でもね、そこでさらにひどいことが起こってしまった。悪魔のような男は、女から子供を取り上げたあげく、それまでの関係を絶つと、なんの責任も取らずに屋敷の外に追放した。なにもかも失ったその女性は、はたして、どうしたのでしょう?」
「……し、知るか! それよりも、く、薬を……ぐあっ!」
ザドの思考は闇に飲まれようとしていたが、二度目の刺突が彼の意識を無理やり覚醒させた。女の話は続く。
「女性は……数日も経たぬうちに自ら胸を突いて命を断ちました。歯を食いしばって、尊厳を奪われながらも必死に耐えた結果に、心が壊れてしまったのでしょう。とても無残で、悲しい話だと思いませんか?」
「……う、るせぇ……くす、り」
ザドにはどうして女がこんな話をするのかわからなかった。男が見目麗しい娘に手を付けるのは日常茶飯事だ。それのなにが悪いのだ、そう思って聞いていた。
「でもね、そこでさらにひどいことが起こってしまった。悪魔のような男は、女から子供を取り上げたあげく、それまでの関係を絶つと、なんの責任も取らずに屋敷の外に追放した。なにもかも失ったその女性は、はたして、どうしたのでしょう?」
「……し、知るか! それよりも、く、薬を……ぐあっ!」
ザドの思考は闇に飲まれようとしていたが、二度目の刺突が彼の意識を無理やり覚醒させた。女の話は続く。
「女性は……数日も経たぬうちに自ら胸を突いて命を断ちました。歯を食いしばって、尊厳を奪われながらも必死に耐えた結果に、心が壊れてしまったのでしょう。とても無残で、悲しい話だと思いませんか?」
「……う、るせぇ……くす、り」