魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
(43)私の愛したお店より
その日――。
ファルメルの街の片隅に新しく造られた建物に、私は朝早くから訪れていた。
広さはちょっとしたお屋敷程度で、白い壁に青い屋根の、爽やかな配色をしたそれが、入り口から人々を吸いこんでいく。部屋数はそう多くはない。入り口から覗くのは、机椅子が立ち並ぶ三つほどの大部屋に、いくつかの小部屋、そして……。
一番奥の突き当りには、何十人もの人が入れそうな講堂が構えられている。中に入った人々は皆この場所に集まって、式の始まりを今か今かと待ち受けている。
(ついにこの日が迎えられたんだ……)
真新しい木の香りを吸い込んで、緊張に胸を鳴らしながら……私はカーテンで仕切られた壇上の奥の控室から、息を潜めて集まった人々の姿を覗く――。
この建物の名前は、“ハーメルシーズ魔導具技術専門学校”。言うまでもなく、魔導具を作り出すための知識と技術――魔導工学を習得するための学び舎だ。
ディクリド様と結婚の約束を交わした日から五年が経ち……私は明日から、この小さな学校の校長兼教員として勤め始める――。
ファルメルの街の片隅に新しく造られた建物に、私は朝早くから訪れていた。
広さはちょっとしたお屋敷程度で、白い壁に青い屋根の、爽やかな配色をしたそれが、入り口から人々を吸いこんでいく。部屋数はそう多くはない。入り口から覗くのは、机椅子が立ち並ぶ三つほどの大部屋に、いくつかの小部屋、そして……。
一番奥の突き当りには、何十人もの人が入れそうな講堂が構えられている。中に入った人々は皆この場所に集まって、式の始まりを今か今かと待ち受けている。
(ついにこの日が迎えられたんだ……)
真新しい木の香りを吸い込んで、緊張に胸を鳴らしながら……私はカーテンで仕切られた壇上の奥の控室から、息を潜めて集まった人々の姿を覗く――。
この建物の名前は、“ハーメルシーズ魔導具技術専門学校”。言うまでもなく、魔導具を作り出すための知識と技術――魔導工学を習得するための学び舎だ。
ディクリド様と結婚の約束を交わした日から五年が経ち……私は明日から、この小さな学校の校長兼教員として勤め始める――。