魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
「この人は……?」
「ああ、彼女は……その」
説明しようとしたフィトロさんはそこで詰まった。王都で私が自殺しようとしていたから、助けてそのまま連れてきた――などとありのままの事実を話しては、妙な誤解が生まれかねない。答えあぐねる彼へ助け舟を出したのは、それを見かねてこちらに戻ってきてくれたディクリド様だった。
「俺の気まぐれだ」
「ハーメルシーズ伯、失礼いたしました……! 無事のご帰還をお祝い申し上げます」
綺麗なカーテシーを披露してみせる少女に微笑みかけると、ディクリド様は私の肩を叩いて示す。
「そう気を使わずともよい。それよりも、この者もお前たちと同じく、家族を頼らず自分の力で生きてゆかなければならなくなった人間だ。このハーメルシーズ城の一員として、仲良く接してやってくれ」
「御意……」
リラフェンという少女が頭を下げ、こちらを見つめてくるが、私はそれどころではなかった。
「ああ、彼女は……その」
説明しようとしたフィトロさんはそこで詰まった。王都で私が自殺しようとしていたから、助けてそのまま連れてきた――などとありのままの事実を話しては、妙な誤解が生まれかねない。答えあぐねる彼へ助け舟を出したのは、それを見かねてこちらに戻ってきてくれたディクリド様だった。
「俺の気まぐれだ」
「ハーメルシーズ伯、失礼いたしました……! 無事のご帰還をお祝い申し上げます」
綺麗なカーテシーを披露してみせる少女に微笑みかけると、ディクリド様は私の肩を叩いて示す。
「そう気を使わずともよい。それよりも、この者もお前たちと同じく、家族を頼らず自分の力で生きてゆかなければならなくなった人間だ。このハーメルシーズ城の一員として、仲良く接してやってくれ」
「御意……」
リラフェンという少女が頭を下げ、こちらを見つめてくるが、私はそれどころではなかった。