魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
 なるほどと私が同意すると、リラフェン嬢は気分よさそうに頷いて、その手本を見せてくれた。気合を入れるようにぐっと腕まくりすると、石鹸水に着けておいた衣服を取り出し、洗濯板の上に乗せる。それは彼女が優しく擦ると全体的に泡立っていった。

「あんまり力を入れ過ぎちゃいけないのね。高い服もあるからさ。基本はざっくりと洗って、汚れのきついところだけ強くこすってくれたらいいから」

 一枚ずつ次々と、丁寧かつ手際よく彼女は作業を終えてゆく。そして流れるように絞り上げ、水を捨てて濯ぎを何度か。そうするとまたたく間に綺麗になった衣服の山が積みあがった。

「終わったやつはこっちの籠に置いとくの。そうしたら別の係の人が干していくから。さあ、あんたもやってみて」
「で、では……」

 とりあえず、今見たとおりにやってみようと、私は一枚の服を掴み上げ、桶に作った石鹸水に晒す。十分に水を吸ったと感じたら、次はそれを板の上で泡立ててゆく。そこまではよかった。
 よし、頑張るぞと気合を入れて男物の上着を擦り始めた瞬間。

 ――ブチブチッ!
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