魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
「い……いいえ。皆さんはむしろ優しくしてくださって。それが……辛くて」
「そう感じているならば大丈夫だ。次にまた挑戦する時には、その悔しさが力となって、必ず一歩前に踏み出させてくれる。そうして足を止めることなく日々を過ごしていれば、必ず仲間たちと同じ景色を見られる場所に辿り着けるさ。皆、お前が力になってくれる日を待っている」

 彼は私に力強く言い切ると、丸めがちになっている私の背中を叩いた。

「今は辛いかもしれん。だが、俺もお前があの城で楽しく過ごせるようになる日が一日も早く来ることを願っているよ。今は毎日、自分なりの努力を続けていればそれでいい」

 そう言い残すと彼は立ちあがり、待たせていた馬に乗って颯爽と消えてゆく。きっと忙しい中、私の姿を見かけてわざわざ元気づけに来てくれたのだ。ここには私の味方をしてくれる人がいる――それを考えただけで、心の中の不安が大きく取り除かれた気がする。

(もう少しだけ、頑張ってみよう……。……あだっ!)

 単純だけれど、信頼する人からの励ましを貰えたおかげで気を取り直すことのできた私の後頭部に、硬い感触がコツンと触れる。
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