魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
 もったいない――不満そうな表情を浮かべていたのが分かったのか、仕事の手を止めてリラフェンがこっちに寄ってきた。

「どうしたのよ、サンジュ」
「……いえ。なにも……」

 私も自身も不思議だった。
 魔導具は、言ってみれば私にとって、あの忌まわしいファークラーテン家の象徴そのものだ。本来なら、このまま一生手には取らず縁のない生活を送るのが幸せなはずなのに……こうして見ると、役目を果たせないまま捨てられるのが残念だと、そう思ってしまう。

 しかしそんな私の感傷で、ここに居る人たちを困らせるわけにもいかない。
 私は悩むのを止めると、彼らと一緒に箱詰めした魔導具を焼却場へ運んでいった。

「――あー、肩が凝った。まったく運ぶだけって言ってもあんなにあると一苦労だわ」

 結構な量はあったが、倉庫と焼却場の間を十度ほども往復すれば、作業は陽が落ちる頃には終わってしまった。
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