魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
 どこか私に迷いがあるのを察してくれたのか、彼はそれだけ伝えると、横に広い体を揺さぶりのしのしと歩き去ってゆく。
 見送る私の背中にぴたっとくっつきリラフェンが囁いた。

「んー? あんたなんか欲しいものでもあったの? 持って行くの手伝おっか?」
「……いえ、戻りましょう」

 だが、私は未練を振り切るようにリラフェンを引き連れ、焼却炉に背を向けた。

 しかし、その日からずっと、寂しさとも虚しさともつかない、整理できない感情が胸にわだかまっていくようで、それは夜ごと私を悩ますこととなった……。
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