魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
「ふっ……」
小さな吐息と共に、ささやかな笑い声が隣から響いてくる。恐る恐る私がディクリド様の方を見上げると、彼は私から視線を外し、くくっと喉を鳴らしていた。
なんだかいっそう恥ずかしくなりながらも、その横顔から目が離せずにいると、口元を押さえた彼はなんとか笑いを噛み殺す。
「すまん……お前があれからどう変わったのかが知りたくて、しばらく様子を見ていたんだが、反応が面白くてな。つい……」
咳払いして仕切り直すと、ディクリド様は体の向きをこちらに向けた。黒髪の隙間から覗く金色の瞳が、柔らかに弧を描く。
「お前のひたむきな頑張りは、たくさんの者から聞かされている。本当に見違えたぞ。俺の期待通り……いや、それ以上にお前は努力し、自分の道をちゃんと進めているようだな。ここに連れて来たことが正解だったのだと、心からそう思う」
(いつもこの人は、私が欲しい言葉をかけてくれる……)
彼はそう言うと、また私の頭に優しい加減で手を置いてくれた。その感触が言葉よりも何倍も雄弁に私の心に響く。
「それは……ディクリド様や、周りの皆さんのおかげです」
「そう言うな。正直、俺は自分を褒められるより、ここに住む者たちが生き生きと暮らせている方が何倍も嬉しいのだ。だから、お前は過去に囚われず、胸を張ってやりたいようにやるといい」
小さな吐息と共に、ささやかな笑い声が隣から響いてくる。恐る恐る私がディクリド様の方を見上げると、彼は私から視線を外し、くくっと喉を鳴らしていた。
なんだかいっそう恥ずかしくなりながらも、その横顔から目が離せずにいると、口元を押さえた彼はなんとか笑いを噛み殺す。
「すまん……お前があれからどう変わったのかが知りたくて、しばらく様子を見ていたんだが、反応が面白くてな。つい……」
咳払いして仕切り直すと、ディクリド様は体の向きをこちらに向けた。黒髪の隙間から覗く金色の瞳が、柔らかに弧を描く。
「お前のひたむきな頑張りは、たくさんの者から聞かされている。本当に見違えたぞ。俺の期待通り……いや、それ以上にお前は努力し、自分の道をちゃんと進めているようだな。ここに連れて来たことが正解だったのだと、心からそう思う」
(いつもこの人は、私が欲しい言葉をかけてくれる……)
彼はそう言うと、また私の頭に優しい加減で手を置いてくれた。その感触が言葉よりも何倍も雄弁に私の心に響く。
「それは……ディクリド様や、周りの皆さんのおかげです」
「そう言うな。正直、俺は自分を褒められるより、ここに住む者たちが生き生きと暮らせている方が何倍も嬉しいのだ。だから、お前は過去に囚われず、胸を張ってやりたいようにやるといい」