魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
 さすが立派な領主様だと憧れの目で彼を見つめる私。だが彼は途中で急に肩の力を抜くと、小声になった。

「――と思うのは半分」
「……あらっ?」

 そして拍子抜けした私に、ディクリド様は疲れた様子を見せると、軽く睨みを聞かせ……。

「もう半分は建前だな。辞めたいと思うことは何度もあった。これからもそうだろう。まあ……そう残念がるな、俺も人間だ。疲れも出るし、すべてをうまくやれるわけじゃない。それでも、ちゃんとした形で誰かに引き継ぐまでは責務をまっとうしようという思いはあるがな。つまり……なにを言いたいのかというとだ」

 急に真面目な顔に戻ると、話を纏めにかかった。

「最終的になんのためなら、自分が納得して励めるのかということだ。生活の糧を得るだけなら、楽な仕事を選べばいい。より多くの金を得て豊かな生活を送りたいのか、人々に貢献できる仕事を選んで自らの胸に誇りたいのか……。お前が仕事に対して求めるものは、一体なんだ?」

 そう問われて――私は即答できなかった。
 ここに来てからのわずかな時では、その主張の土台となるしっかりした想いが育っていない気がして。
 でもひとつだけ確かなのは、やはり……。

「私は……私を受け入れてくれた人たちに、貢献したいのです。私がすることで、その人たち喜んでくれるなら、他にはなにも――」
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