『メガネ男子』に囲まれて

彼女が不在の教室では

 疑問に思った私は、躊躇せずに右隣の小野田君に質問をぶつけてみた。
 予想以上に驚いた彼に正直、私の方が驚いた。
 「あっ! う~ん、目悪いんだよ俺、コンタクト顔に合わなくてさ」
 と右隣の小野田君が私に言った直後、
 「葵~、今日は、天気いいからみんなで外でお昼食べようよ~」
 と同じクラスの女子に誘われ私はお弁当箱を持って教室を出て行った。
 その時、教室に残った男子は思った。
 彼女たちがが教室を出て行ったということは、
このクラスの女子全員が外でお昼を食べるということで……
すなわち、この教室には『男子だけ』の空間に
早変わりしていることを示しているのだ。

 「行ったか?」
 「ああ、大丈夫だ」
 「あ~びっくりした。まさかあんな質問される
なんて……」
 「俺もびっくりして、思わず後ろを振り向き
かけたよ」
 前の席の井上と右隣の小野田が話をする。

 「しかし、何だよ! コンタクト顔に
合わないって……
それを言うならコンタクトが目に合わないが正解だ」
 と左隣の柴田が冷静に話す。

 「だって~。俺だけ伊達メガネじゃん、わかんないよそんなの。
 それに、青木なんて後ろから俺のこと睨むん
だからあせるよ」と右隣の小野田が言った。

 「当たり前だろが。俺が一番後ろから睨みを
きかせているから、この教室はいつも平和で
安全なんだからな」

 「はい、はい」と前の席の井上が呟いた。

 「まあ、今のところは青木の言う通り特に
問題はないが」冷静な柴田が言った。

 「でも生徒はいいけど、あの数学の鎌田、
どうにかならないもんかね?
 この前だって柴田がいたからいいものの」と
右隣の小野田が言った。

 「ああ、あれか……あれは、鎌田があまりにも
彼女にネチネチとしつこく言うからつい、論破してしまっただけだ。
 あのくらいで論破されるのは教師としての資質を疑うよ」
 と左隣りの柴田が言う。

 浜辺葵の席を取り巻くように座る『4人のメガネをかけた男子』、
後ろの席の青木が手を前に差し出す、その上に右隣の小野田、その上には前の席の井上、一番上には
司令塔、左隣の柴田が手を重ねた。

 そして、『メガネをかけた4人の男子』は
ニッコリ笑みを浮かべるのであった。
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