魔王サマの偽カノになっちゃいました!
第4話



◯眞央の家・リビング (眞央視点)


眞央「まじ、調子狂う…」
華子が帰った後、リビングのソファに横になりながら、おでこに腕を乗せる眞央。
【ここまで強く何かを欲しいと思うなんて、自分でもびっくりだな…ーーーー】
【誰にも渡したくない、触れてみたい…そんな感情が渦巻いて消えないーー】
眞央は目を閉じて、きっと自分にとっての初恋であろう出来事を思い出す。


(小学校時代の回想)


ガキ大将(ぽっちゃりした見た目)『お前んち、母親いないんだろ?』
眞央『だから何だ』
ガキ大将『父親にもまともに構ってもらえないんじゃ、可哀想にな』
眞央『…黙れ』
【母親がいないことに"可哀想"、"大変ね"、そう何度言われてきたのかわからない】
【何にも知らないくせにーーーー】
【ガキの頃はそう言われることに無性に腹が立って、何度も取っ組み合いの喧嘩をした】


⚪︎夕方・公園の中


口の横と膝に切り傷を作りながら、ベンチにひとり座る眞央。
眉を顰め、ぎゅっと拳を握る。
女の子「ケガ、してるの……?」
突然した女子の声に、眞央ははっと顔を上げる。
ランドセルを背負ったボブヘアーの、どこかふわりとした印象の女子が立っている。
女の子「あ、ちょっと待って」
眞央「……」
女の子がポケットからハンカチを取り出し、それを水道の水で濡らしている。
そのまま、それを片手にこちらへと戻ってきた。
女の子「い、痛かったら言ってね?」
大きな瞳で見つめられ、なんだか胸がざわつく。
眞央「っつ…」
口の横の傷に触れられ、眞央はぴくりと顔を歪めた。
女の子「ご、ごめんっ!痛かった…?」
眞央「…いや」
眞央の返事に、女の子は膝の怪我の手当てをはじめる。
女の子「あなたは何年生?私と同じ小学校じゃない、よね?見たことないから…」
眞央「…5年」
女の子「私と同じだね」
にっこりと微笑むその子に、小さく胸が鳴った。
女の子「…よし、できた!」
小さなポーチから絆創膏を取り出して、慣れた手つきで眞央の傷に貼った。
女の子「ごめんね、こんな絆創膏しかなくて…」(クマ柄の可愛らしいキャラクター)
眞央「……ありがとう」
ぼそっと呟くように、無愛想な返事をしてしまったが、女の子にはちゃんと聞こえていたようだ。
「どういたしまして」と、にっこりと笑う。
ふと立ち上がった女の子の胸元の名札が目に入る。
眞央「芹沢 華子(せりざわ かこ)ーー」
華子「…え…わっ!名札付けたまま来ちゃった…」
力なく、うな垂れる華子。
【ころころ表情が変わる、面白いヤツだなーーー】
華子「…ふふっ、あなたは私の名前、間違えずに呼んでくれた。ここ座ってもいい?」
隣を指さされ、少し戸惑いながらも小さく頷く眞央。
華子「私の漢字って、ハナコとも読めるでしょう?華やかな子、なんて書くけど、地味な私にはもったいないくらいの名前だなーって」
苦笑いしながら、足元を見る華子。
眞央は静かに話を聞いている。
華子「…そのケガ、転んだりしたものじゃないよね?喧嘩でもしたの?」
眞央「…ムカつくこと言われたから…」
華子「…そう。」
「……でも、それはあなたなりの"嫌だ"を表現をした…ってことだよね?」
眞央はびっくりしたように目を見開いて華子を見る。
華子「…嫌な事は嫌って、言わなきゃいけないのはわかってても私にはそんな勇気がいつもなくて…。だから、あなたの勇気を私はすごいと思う。あ、でもケガしちゃうくらいの喧嘩はダメだよ?」
眞央はふっと小さく笑う。
眞央「…努力する」
眞央の返事に笑顔を見せる華子。

華子「あ、そうだ!」
何かを思い出したように、ポケットから小さな紙に丁寧に包まれた何かを取り出した。
華子「これ、あなたにあげる。さっき水やり当番で花の観察してたら見つけたの」
眞央の手のひらに乗せられたのは四葉のクローバー。
華子「四葉のクローバー。四葉って、なんでも願いごと叶えてくれるんだって」
と帰りを告げるチャイムが街に響き渡った。
華子「私もう帰らないと…ケガ、早く治るといいね」
小さく手を振って歩き出す華子。
眞央「お前の名前…」
華子「……え?」
眞央の声に、華子は足を止めて振り返る。
眞央「華子って名前、お前にぴったりだと思うけど」
びっくりしたように瞳を見開く華子。
華子「ありがとう。じゃあね」
どこか恥ずかしそうに、だけど花が咲いたような笑顔を浮かべ、小走りに公園を出ていく華子。


その後ろ姿見送った眞央は、手のひらの四葉を見つめる。

【いつかまた、あの子に会えますようにーーーー】
そう願いながら。


(小学校の回想終了)



⚪︎高校・入学して数日 (回想)


女子「す、好きです!付き合ってください!」
眞央「無理」
即答する眞央の横を、逃げるように走り去る女子。
高校に入学して、たった数日間のうちに何度もされる告白。
しかも誰ひとり、話したことのない女子。
眞央「(いい加減、疲れる…)」
後ろ髪をかきながら、小さくため息をついて階段を降りる。
遥「ほらカコ、早く行かないと、パン買われちゃうよ!」
廊下を横切った女子が呼んだ名前に、眞央はぴたりと足を止める。
華子「ま、待ってよ!」
眞央の前を横切る女子に、眞央は目を見開く。

あの頃よりも大人びてはいるが、見間違えるはずかない。


【まさか、本当に再会できるなんてな…ーーー】


四葉の願いのおかげか、高校でまさかの再会をしたのも束の間ーー。




『ほ、本当ですか!?よかった!』
痛みが楽になったという眞央に見せた笑顔。

【誰にも渡したくない、触れてみたいーー】
再会できるかもわからない女子を何年も想い続けて、いざ再会できた途端に、一気に感情が溢れ出す。

『私たち初対面ですし…』
再会に嬉しさを感じていた自分とは裏腹に、華子は眞央のことは覚えていなかった。


『わ、私にできることなら、何でも…』
そういう華子に対して、自分の感情任せに、『付き合え』と一言。


だが華子は眞央に好意を抱くどころか、警戒しているように見える。


(回想終了)


◯眞央の家・現在に戻る


眞央「都合が良すぎるにも程があるよな…」
【でも、今更逃す気なんてない】
眞央「(なら、徹底的に落とす)」



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