ショパンの指先
「私の前では、泣いていいのよ」
項垂れている洵の頭を優しく抱きしめた。一つのことに没頭し、精神世界で孤独に戦う芸術家が、精神的に不安定になるのは、私はとても理解ができた。私も絵を描いていると、どこか別の世界にトリップしたような気分になることもあるし、のめり込めばのめり込むほど、心が不安定になることもある。何かに追い掛けられるような焦燥感を常に抱え込みながら、それでも魂を削って作品に打ち込む。これはもう、職業病のようなものだ。
洵が精神的に弱いわけじゃない。感受性を極限にまで引き上げて没頭し続けていれば、不安定にならない方が難しい。
洵は震える長い指先を持ち上げて、私の腰をぎゅっと掴んだ。私の香りを吸い込むように大きく深呼吸しながら、私の身体を引き寄せるように強く抱き寄せた。
洵は何かに怯えるような瞳で私を見上げ、大きな手の平を私の頬に這わせた。そして、その手の平を私の後頭部まで持っていくと、ぐいと引き寄せて唇を重ねた。
むさぼるようなキスだった。舌が絡み合って、唇を吸い上げられるような情熱的で激しいキス。何度も向きを変えながら、一心不乱に唇を求め合った。
「んっ…あっ……」
思わず声が零れ落ちる。
洵の柔らかい唇も、縦横無尽に動く舌先も、溢れ出る唾液さえ、全てが愛おしかった。全てが欲しかった。
洵の指先が、私の身体を撫で上げる。背中を愛撫され、胸を下から揉み上げるように掴まれた。身体に電流が走ったかのように、爪先から頭の先まで一気に快感が駆け上がる。
その間も、啄むようなキスをしたり、口の奥深くを舌が動き回ったりしていた。頭が真っ白になって何も考えることができない。このまま全てを奪われたい。そう思った時だった。
項垂れている洵の頭を優しく抱きしめた。一つのことに没頭し、精神世界で孤独に戦う芸術家が、精神的に不安定になるのは、私はとても理解ができた。私も絵を描いていると、どこか別の世界にトリップしたような気分になることもあるし、のめり込めばのめり込むほど、心が不安定になることもある。何かに追い掛けられるような焦燥感を常に抱え込みながら、それでも魂を削って作品に打ち込む。これはもう、職業病のようなものだ。
洵が精神的に弱いわけじゃない。感受性を極限にまで引き上げて没頭し続けていれば、不安定にならない方が難しい。
洵は震える長い指先を持ち上げて、私の腰をぎゅっと掴んだ。私の香りを吸い込むように大きく深呼吸しながら、私の身体を引き寄せるように強く抱き寄せた。
洵は何かに怯えるような瞳で私を見上げ、大きな手の平を私の頬に這わせた。そして、その手の平を私の後頭部まで持っていくと、ぐいと引き寄せて唇を重ねた。
むさぼるようなキスだった。舌が絡み合って、唇を吸い上げられるような情熱的で激しいキス。何度も向きを変えながら、一心不乱に唇を求め合った。
「んっ…あっ……」
思わず声が零れ落ちる。
洵の柔らかい唇も、縦横無尽に動く舌先も、溢れ出る唾液さえ、全てが愛おしかった。全てが欲しかった。
洵の指先が、私の身体を撫で上げる。背中を愛撫され、胸を下から揉み上げるように掴まれた。身体に電流が走ったかのように、爪先から頭の先まで一気に快感が駆け上がる。
その間も、啄むようなキスをしたり、口の奥深くを舌が動き回ったりしていた。頭が真っ白になって何も考えることができない。このまま全てを奪われたい。そう思った時だった。