ショパンの指先
受け入れてくれたと思っていたのに。私達の間には、私達にしか分からない二人だけの世界があって、離れることなんてできないと思っていたのに。特別だと、信じていたのに。

こんなに呆気なく、突然に、終わりが来るなんて思ってもいなかった。心変わりを責めることなんてできないけれど、それでも最後に理由くらい教えてほしかった。

結局、好きだと言ったのは私だけだった。洵の口からは一度も好きという言葉は聞けなかった。それが答えなのだと言い聞かせても、切なくて会いたくて、私のことを好きじゃなくてもいいから側にいたいと願ってしまう。

初めて見たときから、洵に魅かれていた。それは説明することのできない、強烈な本能のようなものが洵を求めていた。才能に惚れた。そして洵の人間性にも惚れた。ぶっきらぼうで口が悪くて冷たくて。それでも溢れ出る優しさは、一緒にいるととても居心地が良かった。

繊細なところも、少し神経質なところも、短所でさえも愛しく思っていたのに。どうして突然終わりが訪れたのか。どんなに考えても分からなかった。


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