ショパンの指先
「洵、一ついいこと教えてあげる」

 優馬は不敵な笑みを浮かべて言った。……いいこと? 俺が訝しげに目線を上げると、優馬は得意気に言い放った。

「女はね、そういう弱くて駄目なところがある男に、どうしようもなく魅かれるものなのよ」
「なんだよ、それ。全然励ましの言葉になってない」
「励ますつもりなんかないわよ。私は好きな男しか励まさないわよ。甘えないで」
「甘えてねぇよ」
「甘ん坊のくせに」
「はあ!?」

 本気になって怒りだした俺を見て、優馬はカラカラと笑い出した。その笑い声を聞いていると、なんだか馬鹿らしくなった。いつの間にか気分が晴れていた。

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