ショパンの指先
 全身が敏感になって、突かれる度、電流を身体に流されるようだった。

 洵が思い切り突き上げると、再び真っ逆さまに急降下した。頭がもうおかしくなりそうだった。身体が自分の身体じゃないみたいだ。
そして私の意識はふっと飛んだ。

 目を覚ますと、洵の腕の中に包まれていた。顔を上げると、気持ちよさそうに眠る洵の顔があった。目を瞑ると洵は少し幼く見える。普段の姿からは想像できない無防備な寝顔に、私はとても幸せな気分になった。

 肌に伝わるシーツの滑らかさ。私はあのまま裸で眠っていたようだ。洵の身体に頬を寄せて密着する。やっと一つになれたのだと思うと、嬉しくもあり、なんだか少し気恥ずかしくもあった。

「んんっ」

 洵は眉を寄せて、それからゆっくりと瞼を開いた。視線がぶつかる。洵は少し眠そうな顔で優しく微笑んだ。

「あ~、なんか久しぶりにぐっすり寝たな」

 洵は上半身だけ起き上がり、首をポキポキと鳴らした。怠惰な私は、まだ横になりながらその様子を下から見上げている。

 洵は起き上がり、脱ぎ捨ててあったズボンを履きだしたので「起きるの?」と聞くと「軽く指を動かしたくなって」と言った。

 ピアノの練習しに行くのだと分かり「私も行く」と言って、洵の脱ぎ捨てたワイシャツを着た。

「おいそれ俺の」
「ダメ?」
「いや、いいけど」

 ブラジャーもつけずにワイシャツだけ着た私を見て、洵はどことなく嬉しそうだった。洵の引き締まった上半身をまだ見ていたいからワイシャツを拝借したのだけれど、洵が喜んでくれるとは思わなかった。ショーツだけ履いて、胸元は第二ボタンまで開けておこう。
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