【短】背伸びしてモックカクテル
でもさ、知ってる? ありのままの素朴な自分を晒せるのって、強いからなんだよ。
弱くて、だけど弱く見られたくなくて必死に繕ってるような人間に「強くなれば良いじゃん」なんて、それこそ酷だと思わない?
……なんてもちろん、口に出しては言わないけど。
それにもう一年近く経つ。元カレのことは本当に未練はない。
ただ、選ばれた月岡さんを見て……自分が嫌になってしまうだけ。
ああ、早く放課後にならないかな。Soléil&Luneに行きたい。春樹さんに会いたい。今日はどんなモクテルを作ってくれるのか、楽しみで仕方がない。
──そんなに楽しみにしていたのに、私は今日店に着いた瞬間、大きな絶望を味わうことになった。
いつもよりも少し早い、午後4時半。春樹さんはもういるだろうかと外から店内をのぞきこんだら目に入ってしまった。
店の中にお客さんは一人。私と同じ制服を着た女の子。
その子と春樹さんが楽しそうに話している。