【短】背伸びしてモックカクテル
お客さんに大人気の春樹さん。普段、誰かと話しているというだけではショックを受けるということはない。
ショックを受けた原因は、彼と話す制服の女の子が……月岡さんだったからだ。
信じられなかった。
月岡さんがこの穴場のカフェバーを知っていたこと自体もだけど驚いたけど……。
月岡さんと話す春樹さんは、見たことがないくらい安心しきった、どこか幼い表情をしていた。彼にとって月岡さんが特別な存在だというのは、それだけで十分すぎるぐらい伝わってきた。
「っ……」
心臓がバクバクと大きな音をたてる。
泣きそうだ。
そうか。春樹さんもなのか。
高校生のくせに、大人ぶってバー営業の時間帯に好んで来る私より、歳相応にカフェ営業の時間に来る月岡さんの方が……可愛く見えるに決まってる。
もう頭の中がぐちゃぐちゃで、思考がどんどん悪い方へ沈んでいく。